
空き家問題について解説!原因や行政・自治体の空き家対策も教えます
放置された空き家は、毎年増え続けます。
なぜこれほど増えてしまったのか。
どのような問題点を抱えているのか。
空き家問題の根本に迫り、その原因を解説しました。
行政や自治体の対策も紹介しています。
管理に悩まされる。将来的な見通しを知りたい。
そんな空き家問題の参考にしてください。
空き家問題とは
誰も管理しない。その結果として近隣に迷惑をかける。
老朽化によるリスクも生まれ、トラブルの原因となります。
総務省「住宅・土地統計調査」によれば、空き家は1958年(昭和33年)以降右肩上がり。
住民から苦情が増え、自治体は対応に追われました。
その窮地を救ったのは、「空き家等の適正管理に関する条例」です。
2010年(平成22年)埼玉県所沢市が制定し、これを起点に全国的な意識も高まります。
では、現在の状況や問題視される理由もお伝えしましょう。
空き家問題の現状

総務省統計局の公表では、総住宅数に占める空き家率は13.6%(2018年現在)。
2%だった1958年を踏まえると、60年で約12%増になります。
数字だけ見れば、それほど多く感じられないかもしれません。
しかし、空き家の数に比例し、空き家率は増える一方です。
住宅・土地統計調査は、5年後ごとに行われます。
次は2023年(令和5年)。空き家率に注目しておきましょう。
なぜ空き家が問題視されているのか
空き家はさまざまな問題を引き起こします。
以下の図表をご覧ください。

こちらは国土交通省のアンケートを元に、東京市区町村自治調査会が作成しました。
景観や防犯、ゴミの不法投棄が不安視されています。
他に獣害や建物倒壊もあり、空き家問題への強い意識を感じられるでしょう。
さらに身近な問題へ触れておきます。
犯罪・災害リスクが増える
ズバリ!空き家が増えれば、犯罪と災害のリスクも増します。
まずは犯罪リスクをご紹介しましょう。
「割れ窓理論」をご存知でしょうか?
アメリカの犯罪学者:ジョージ・ケリング博士の研究です。
博士によれば、1枚の割れた窓ガラスを放置すれば次々に割られる。
そして建物全体も劣化し、最終的に街が荒廃する。
空き家放置で管理不行き届きとなれば、社会の秩序を保てないかもしれません。
誰も注目しない空き家は、犯罪者のアジトになります。
世間から身を隠す場所として最適でしょう。
次の懸念は災害です。
老朽化した空き家は、災害時の復興を妨げます。
例えば豪雨に遭い、床上浸水を経験したと仮定してください。
所有者不明の空き家は、勝手に手を加えられません。
遠くに住んでいて対応できない場合は、片付けてもらえない可能性もあります。
つまり衛生環境が悪いまま、何もできない状態になるのです。
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資産価値の低下
放置された空き家は、確実に建物の劣化を早めます。
管理しなければ、家はどんどん傷んでいくでしょう。
換気しない。お手入れしない。
かろうじて建っているだけなら、いつ倒壊してもおかしくありません。
「土地の値段が上がるまで」と様子を見ても、空き家がネックになります。
解体しなければ売れない。空き家をリフォームする。
何らかの対策をとらなければならず、想定外の出費が重なるとも考えられるでしょう。
空き家の存在は、多くの人が思うより深刻です。
空き家問題の原因

国や自治体も対策を実施していますが、空き家は増え続けています。
廃屋のような家だけではありません。
一等地にあるお屋敷。両親から相続した実家。
社会問題化している背景には、複雑な事情も見え隠れしています。
高齢化社会の進行

日本は少子高齢化。
厚生労働省によれば、2021年(令和3年)の出生率は1.30です。
人口減少に歯止めをかけられず、医療技術の進歩で高齢者は増加。
管理できない空き家は放置されたままになります。
以下の表をご覧ください。

こちらの表でわかるように、核家族と単独世帯が増えています。
最新の統計では、もっと割合の差もあるでしょう。
高齢化が進めば家の管理は難しくなり、いずれ誰も住まない空き家となります。
新築住宅を好む人が多い
日本人は欧米人と比べ、新築を好む傾向にあります。
リノベーションブームもありますが、それはつい最近のこと。
中古物件は山積みでも、選択する人は多くありません。
<欧米で中古物件が好まれる理由>
- DIY文化が根付いている
- 不動産としての価値が高い
- 建物維持の意識が高い
ヨーロッパでは、古城をマイホームにしている人もいます。
日本は優遇税制や取引費用の問題もあり、新築へ流れる人が多いのでしょう。
湿度の高さが関係し、耐用年数の低さも問われます。
相続問題
実家の空き家を相続しても、遠方に住んでいれば管理できません。
現住所が都市部で空き家の所在地が農村部なら、帰省も難しいでしょう。
都道府県内は可能でも、飛行機を使うほど離れていれば無理です。
頻繁に通える。誰かにお願いできる。
それができなければ、空き家は大きな荷物になります。
別問題としては、相続人がいないケースも挙げられるでしょう。
親類縁者が見当たらなければ、国有財産になります。
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空き家を相続した時の問題点と対処方法
行政の空き家問題に対する対策

2015年「空家対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
この法律で、市区町村が問題解決に介入できます。
具体的には建築基準法2条35号を解釈し、自治体が特定行政庁として執行します。
そのため法律に基づき、老朽化した危険な空き家への対応をとれるでしょう。
<これまで取り沙汰された問題>
- 不動産登記簿で所有者を追えない
- 固定資産税台帳を確認できない
- 行政処分ができない
- 財政的措置をとれない
さまざまな条例にしばられ、踏み込めない領域がありました。
ところが空き家対策特別措置法を運用し、法的根拠に従って対応できるわけです。
地方自治体の空き家問題に対する対策

4つの自治体を例に挙げ、対策をまとめました。
東京都大田区
協定団体の案内 | 専門アドバイスを受けられる団体の案内 |
空き家に関するイベント | 司法書士や税理士による無料法律相談会 |
マイホーム借上げ制度 | 50歳以上の方が所有する空き家を借り上げ転貸 |
空き家総合相談窓口 | 地域交流や子育て支援などに活用 |
東京都世田谷区
せたがや空き家活用ナビ | 空き家に関する相談や事業者とのマッチングサーチ |
対策セミナー | 空き家と住み替えの無料相談会 |
活用セミナー | 空き家利用と活用普及の相談事業 |
愛知県名古屋市
対策セミナー | 事前申し込み不要の相談会 |
空き家活用支援事業費補助金 | 空き家活用の改修工事を助成(最大100万円) |
管理サポート | ふるさと納税による空き家の見回り(1回:11,000円) |
老朽危険空き家等除却費補助金 | 危険な空き家を撤去する工事費の助成(最大40~80万円) |
福岡県北九州市
空き家バンク | 空き家を求める人と所有者のマッチング |
住宅セーフティネット制度 | 高齢者や子育て世帯、低額所得者へ賃貸 |
空き家や留守宅に関するセミナー | 弁護士・司法書士・税理士による相続・売買・管理・活用問題の相談会 |
管理事業者紹介制度 | 点検・風通し・雨漏り確認・除草を行う事業者を紹介 |
空き家総合相談 | 相続登記・売買・賃貸など、自治体への相談 |
マイホーム借上げ制度 | 50歳以上の方が所有する空き家を借り上げ転貸 |
空き家の数や環境など、自治体ごとに対策も異なります。
お住まいの自治体HPを確認してください。
まとめ
空き家を放置すれば、多くのトラブルに見舞われます。
高齢化や相続問題で、管理されない危険な不動産となるでしょう。
何か起こってからでは遅く、対応に追われるかもしれません。
だからこそ所有者は、処分方法の検討や放置リスクを考えてください。